いまさら聞けないあれこれ「RIP、APPE、CPSI」

■デジタル化した製版印刷ワークフローを支えてきた技術

様々な三文字四文字略語が溢れる昨今、いかがお過ごしでしょうか。
今回はデジタル化した製版、印刷ワークフローを支える技術、RIP、APPE、CPSIについて解説します。

デザイン、制作では直接関係しませんが、利用するアプリケーションの根っこに位置している技術ですから、知っていて損は無いというより、むしろお得。製版なら事故対策や障害の原因なんかに効果があります。営業や工務なら…適当に相づち打てる?

▼そもそもの始まりPostScript

PostScriptのそもそもの始まりは(あっ、これ長くなるやつだ)(中略) 三〇年以上前に開発された、高性能なレーザープリンタ向け制御言語です。

当時はPCの処理能力はもちろん遅い、PCとプリンタ間の通信速度もクッソ遅いといった状況。
それならと、PC並のCPUやメモリを積んだプリンタを用意して、曲線の計算式や素のテキストをPostScript言語で書いて指示出すから、プリンタはそれを理解して計算したりフォントを当てはめてね、と。そういう構図ですな。

PostScript使わない場合のプリンタ出力は、アプリケーションやPCがプリンタに事細かく指示(そこはスミ、ここは罫とか)を出してるわけで、
このへんは外注の専門業者を使うか社内の担当部門でやるか、自分でやったほうが早いか指示出すのめんどいけど他の者にやらせるかという構図に似てますね。

で、この構成が行ける、写植や烏口使うより綺麗!と気づいたので

  • フィニッシュワークとか不要じゃね? じゃ原稿をプリントして入稿(版下原稿)
  • さらに製版フィルムに焼き込もうぜ、いやいや転写するよりレーザーで細かく感光しようぜ(フィルムセッター)
  • いやフィルム作れるならレーザーで金属板、刷版に焼き込んじまえるだろ、(CTP)
  • さらにクソッ早いインクジェットとバカ早の並列処理マシンで刷版CTP版無しで直接プリントしようぜ!(デジタル印刷)

というおおざっぱすぎる流れで現在に至ります。

ざっくりしたまとめ:PostScriptとは、外注への詳細な指示。楽は出来ますが、丸投げはできません。

PostScriptRedBook

■RIP(Raster Image Processor)

そしてようやく今回解説の用語に到達です。

RIPはDTPで作られたEPSやPDF、画像を食ってプルーフやCTP版用のデータやPDFに変換するシステムで、だいたいWindowsサーバに搭載されて売られてます。なので見た目はいわゆるサーバ。
日常会話でなら、とりあえずこれぐらいのイメージでOK。

RIPはプリント用データを生成するプログラムや機器を指します。もともと物理的な構成、システム(出力機とその内部回路、プロセッサ)のことでしたが、半導体、プログラム技術の発展により物理的な制限を外れて概念的なモノになってます。Windowsサーバで動くRIPとか、RIP内蔵プリンタとか、フリーウェアのプログラムとか、なんでもアリですネ。

で、ここまで説明しなかったプリンタの利用するプリント用データはどういうモノかというと、ピクセル単位の画像、ビットマップ画像、デジカメ画像とか。方眼紙に当てはめるように、格子状にバラバラに分解され、それぞれに色や濃さが決められてるデータです。
デジタル画像的な見方だと画素単位、製版印刷的な見方だと網点単位ですな。こういうデータならプリンタもいちいち考えずに、紙にインク吹いたりや版に刻めるって寸法です。

RasterVector

ところでRIPのR、Raster(ラスター)ってなんだって話ですが、大抵はベクター画像に対するラスター画像、画素単位に分解された画像だよ、って説明がほとんどです。なので、いやまて、その「ラスター」って単語の元々の意味、語源はなんじゃいってのはスルーされてます。

大元は前世紀初頭あたりにドイツで開発された網点印刷技術、網スクリーンに基づくんじゃないかなー的な。網点を作る網スクリーンの格子線が、楽譜の五線罫用の熊手型筆記用具(ラテン語でrastrum、ドイツ語でraster)で引っ掻いた感じだし、網スクリーンをrasterとかそういう風に名付けたとか?
結果として網点やその技術=rasterとなり、さらにその後のブラウン管テレビの走査線スキャン(ラスタースキャン)技術でも使われてRaster自体がそういう意味になった、とかなんとか。

製版印刷技術からスタートして、映像技術に移り、デジタル技術として製版印刷方面に戻ってきた感じなのがRIP! です。デジタル処理なので網点化というより画素化、バラバラに分解しちゃうのがRIPですよ。

▼エンジンは同じでも

いろいろ説明は続きましたが、印刷業界の会話で使われるRIPは「どこのメーカーの製版出力機か」ぐらいの意味です。大日本スクリーン製造ならTrueflowやEQUIOS、富士フイルムならCelebrantやxmf、日本アグファゲバルトならApogee、コダックならPrinergy等々。

これらRIPを開発、販売する各社は、Adobeの提供するPostScript/PDF解析変換プログラムの供給を受け、それぞれ独自のカスタマイズを行ったうえで、製版システムに仕立てて販売しています。同じエンジンを使って、違うデザイン、用途の車を作る、って感じですね。RIP

ところがこの各社ごとのカスタマイズがくせ者で、同じデータを食わせても処理落ちしたりしなかったり。また開発元Adobe社のアプリのほうが行儀が悪く仕様書通り動いてなかったりして、わりと野放図ではあり、いやもうホント困ります。

そういうワケで仲間仕事、分業化で成り立つ都市部では、導入するRIPの横並びや確認作業が多々あります。障害や事故要因を減らしたいですからね。逆に企画制作から発送まで自社の敷地でやっちゃう総合印刷会社なんかは、好きに選んでるようなイメージが。

まとめ:RIPとは、製版印刷で必要なサーバ。メーカーがいろいろあって違いも多い。

■CPSI

当初PostScriptはプリンタに搭載されたプロセッサで処理していましたが、技術進歩により別立てのPCで処理させた方が速くて弄りやすくて安く済むってんで、組み込み系からPCのプログラムへ逆戻りします。CPSI(Configurable PostScript Interpreter)の名前通り、設定可能なPostScript翻訳システムってことですよ。
これが四半世紀前ぐらいの話で、最終的には前世紀末あたりで完成系となりました。なのでPCやソフトウェアの進化から見ると相当の昔のシステム、DTPソフトに合わせるとIllustrator8あたりが最新版です。
こう考えるとIllustrator8はPostScriptの到達点、有る意味完成系だったわけですな。そりゃ今でも使いたがる人が居るのも無理は無いっつーかね。

古いからといって悪い理由にならないのが製造業ですが、古いと都合が悪いのも製造業。2014年現在のDTP、製版、印刷環境では非常に都合が悪い。いやまぁ、別にCPSI程度の処理でイインジャネーノってデータはたくさん入稿されますし、新しいRIPを使わない方法もありますが、そのへんは手間と時間との兼ね合いとかホラ、終売してるしメンテもしてないとか、管理の都合というか。

そういう感じで、CPSIは前世紀の製版システムで、現在のDTP環境には合わないという話です。

ps1

▼どれくらい古くてアレでナニなのか

PostScriptの最終版が1997年、油断すればもうすぐ20年です。そして前述の通りIllustrator8とほぼ同じ、そこから先の機能、透明効果やなんかには全然対応していません。2000年代はRIP開発の各メーカーが独自に対応してきた経緯があります。まぁ事故も多かったですが! ホントに! 多かったですけど!(ここ強調)

で、何故そこでPostScriptの開発を終了させたかというのは、PDFへの切り替えを進めたいAdobeの思惑でした。基本設計が古く時代と合わないPostScriptをバラし、不要なモノをさっ引き、機能も追加し新しく作り替えたPDFに乗り換えないと、新しいアプリケーションが作れない、売れない!というからくりですな。

また、Adobeは前世紀末あたりからPostScriptからPDF技術に以降していくため、Illustrator形式を読み込める他社ソフトが減っていきます。Adobeも切り替える方向で舵を取ったものの、かなり紆余曲折、いや適当な開発方針でバージョンを重ねていたのもその影響かなと思わないでも。

ちなみに、製版用PDF規格「PDF/X-1a」はPostScriptに合わせた形式です。なので元データで透明効果を使うと、効果が引っかかるとこ全て合成して一枚の画像化にするというステキ仕様。しかもそのPDF/X-1aに合わせようとする手順自体は決まっておらず、それもアプリケーションやバージョン毎に挙動が違いますから、制作時と同じアプリケーションとバージョンが無いと危なっかしくてたまらない。

そんなこんなで、CPSI自体は終了してますが、その息吹は未だ漂っているような。

APPE_CPSI

まとめ:CPSIとは、昔のRIP。最新のDTPを使うなら、かなり都合悪い。

■APPE

PostScriptとCPSIを引き継いだのがAPPE(Adobe PDF Print Engine)です。真打ちが来ました!

でも遅れすぎです、供給が2006年ですよ。CPSIだけで10年戦ってきたRIPメーカーと製版業者はいい加減APPE無しでPDFと向き合うことに疲れたどころか慣れてしまい、透明効果があろうと無かろうとPDF/X-1aで適応しちゃってました。

最近になってRIPや機器更新の都合で、最新のDTP環境、PDF形式に対応したAPPE搭載RIP、そしてそれに合わせたPDF/X-4規格への移行も進んでますが、APPEとPDF/X-4が必要な複雑なデータは、そもそもAPPE使っても処理結果が微妙だったりエラー吐いたりするので、銀の弾丸ってわけでは…という、有る意味、矛盾した状況に。そしてRIPを積んだWindowsサーバもCPU速度もCPU数もメモリも桁違いになり、処理が速いのはAPPEがスゴイんだかマシンのスペックがすごいんだか微妙なイメージがあります。

RIPが全てAPPE搭載モデルに切り替わっても制作側、製版側は相変わらずCPSIな作りのままなら、あんまし意味は無いよーな気がしないでもありません。が、人も機械と同じように世代交代するので、APPE無いと困るという状況になってくんだろうなーとも。

APPE

▼どういう環境で活きるの?

PostScriptでは透明効果の仕様が理解できず、メーカー独自処理やPDF/X-1a保存で対応してきましたが、APPEによって特に合成画像化などせずにそのまま処理出来ます。なので、ボカシやドロップシャドウ、光彩効果、また特色やRGBデータもわりと気にせず使えます。
このあたり、ワンソースマルチユース、画面で見たものをそのまま形になるってステキですね。まー想像してないと、やっぱり困った結果が突きつけられるってのは昔から変わりませんが。

表現の広がり以外にも、猛烈な並列処理速度を必要とするインクジェット輪転のバリアブル印刷への対応が進み、現在ではAPPE3が最新バージョンです。

 まとめ:APPEとは、最近のRIP。最近のDTPと相性良いが、信じられるほど使い込まれてはいない。

 

 

 

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